障害のある作家たちの
くりかえしの創作活動から 生まれる「音」を
Cornelius・小山田圭吾と共に 「音楽」に昇華する

MESSAGE FROM HERALBONY

2022年11月。

全社員に対して『コーネリアス・小山田圭吾さんと共に、知的障害のある人々が紡ぎ出す「日常の音」を楽曲にしたい』という想いを届けました、賛成も反対もありました。

ただ私には、最高の音楽が生まれる確信と、社会に潜む偏見や壁や閉塞感を音楽という形で越えられる両方の確信がありました。

そして、知り合いを辿り、一通の手紙を届けました。

小山田圭吾さんは、私たちの熱を帯びた願いに応えてくれたのです、過去の事実に真正面から向き合いながら。

誰しも、声高には語れぬ過ちや傷を抱えながら、曖昧で複雑なこの世界を歩んでいると私は思っています。果たして、この世に「清廉潔白」などという人生が存在するのでしょうか。

私たち双子もまた、人間的に破綻していた中学時代がありました、過去を美談にするつもりはありません、ただ、過去を受け止め、未来を変えることはできると信じています。

「ん~」「さんね」「な~い」「し~んかんせ~ん」。

4歳上、重度の知的障害を伴う自閉症の兄・翔太は本日も、謎の言葉を延々と唱え続けています。

響き自体が心地いいのか、意味や意図はあるのか、まったく分かりません。ただひとつ言えるのは、私にとっては心地よく、とても好きな音だという事実です。しかし、外では奇異の目に晒される音に変貌を遂げるのです。

知的障害のある人の、自閉症のある人の、不思議な行動特性は、コーネリアスにより、音楽へ昇華されました。

どうか、彼らが奏でる日常の音と、変わりゆく未来の予感の音に、耳を澄ませてください。

株式会社ヘラルボニー Co-CEO
松田崇弥 松田文登

MESSAGE FROM CORNELIUS / KEIGO OYAMADA

この曲「Glow Within」は、HERALBONYの松田さんから届いた一通の手紙をきっかけに生まれました。

手紙の言葉に触れ、ずっと気にかかっていたことが頭に浮かびました。 過去に知的障害のある方々に対して、配慮を欠いた発言をしてしまい、批判を受けたことがあります。それ以降、自分なりにこの問題との関わり方を考えてきました。

その少し後に、誘っていただいてHERALBONYの展覧会を訪れました。

会場で作品に向き合っていると、内面がそのまま現れたような線や形にひかれました。 描こうとして描いたというより、内側からこぼれ出てしまったように感じられました。 手紙には、“ルーティンレコード”という構想についても書かれていました。

知的障害のある方々の日常にある、繰り返される動作やふるまいに宿る音に目を向けるという考え方に、無理なくなじむ感覚がありました。ふだんあまり交わることのない人たちとのあいだにある距離が、少し変わるような感覚もありました。

この曲は、そうした表現や日常の断片に触れながら、自分なりの仕方で音にしてみようと考えて制作したものです。

小山田圭吾

VISIT TO LUMBINI ART MUSEUM & ISAI PARK @ MORIOKA

ARTISTS

  • Midori Kudo
    Midori Kudo
    彼女の制作には、瞑想から生み出されるような果てしなさがある。完成を目指して時間を積み上げていくのではなく、流れることのない閉じた時間のなかで、「今、この1ストローク」だけが無限に繰り返されていくような。時に夢見るような笑顔で愛しそうに周囲の人に話しかけていたり。時にとめどなく独り自分の内なる世界に没入していたり。そのまなざしは彼女の心だけに映る何かを追いかけ、たゆたい続ける。過去や未来、あるいは人間の内と外の境目が、彼女の周囲で陽炎のようにゆらぐ。
  • Fuco:
    Fuco:
    音楽を聞く、ピアノを弾く、パズルをする、プールや温泉、ジムに行く。彼女の毎日は様々なルーティンでできている。学校に行けず暇を持て余していた時期に、母が「マルを描いて」と紙とペンを渡したのがアートの始まりだが、同じモチーフを繰り返すとことは、紙の上でもルーティンを産んでいる。彼女の狙いがモチーフの連続か、繰り返している音かのどちらかは不明。
  • Kaede Wajima
    Kaede Wajima
    毎朝決まった時間に起き、録画番組の確認から1日がスタートする。ハサミで作られた有機的なモチーフは、童話をもとにしたごっこ遊びのアイテムとしてうまれた。最近はヘッドフォンで音楽を聴きながら大好きな物語をアレンジしたオリジナル小説作りに勤しんでいる。
  • Hiroyuki Ukai
    Hiroyuki Ukai
    水に溶かしたアクリル絵の具をアルミの器に入れ、刷毛で画用紙に液体を飛ばす動作を繰り返すことにより、紙の上で色を踊らせる。ひとたび使い終われば、その器は水で綺麗に洗い流される。刷毛や水の音に耳を澄ませているのか、薄まりながらなめらかに色が交差する水の流れに心を奪われているのか、その一連の反復の訳は彼のみぞ知る。
  • Kanta Wajima
    Kanta Wajima
    2歳の頃、絵本でみた動物に興味を持つようになり絵を描くようになる。成長とともに落語、アニメ、みんなのうた、トリビアなど、その時々で興味あるものを集合させて描くことが好き。絵の中に登場するキャラクターは本人と共に妹・楓の姿が描かれることが多い。理由は「その方が楽しいから」。
  • Masahiko Kimura
    Masahiko Kimura
    独自に生み出した楔形文字のような筆致(通称「キュニキュニ」)で構成される彼の作品。作品は国内外で評価されているが、当の本人は外界の雑音に無頓着。退勤15分前になると帰り支度を済ませ、自席で退勤時間を待つのが彼のルーティン。その日施設であったことは自宅に帰り次第日記に忘れずに書き、両親と共有する。
  • Nozomi Fujita
    Nozomi Fujita
    小学生のころから街にあふれるロゴマークや文字に強いこだわりを持ち、気に入った看板やロゴマークを見つけるとひたすら眺め続けるのがルーティン。サインポール、エレベーターの鍵穴、乗り物の通風口などの日常生活で目にした物の中で、自身が気になるものを描いたかと思うと、惜しみなく破り、さらにそれをコラージュして再生する。自身が何らかの言葉を発し、決まった言葉を返してもらう独自の言葉遊びがある。
  • Misaki Oya
    Misaki Oya
    彼女が描く作品のほとんどは「お城」。それは、アニメに登場したお城をイメージして描いているそうだ。アニメに登場する主人公3人のキャラクターカラーであるピンク、黄色、水色は作品にも反映され3色を主に使用し、三角形や四角形を規則的に重ね合わせ色を塗り積み上げ城は築かれていく。
  • Sanae Sasaki
    Sanae Sasaki
    1990年代に創作を始めて以来、絵画だけでなく、織り物や切り紙、刺繍など、さまざまなかたちで表現を続けてきた。四角や丸など、基本単位となるシンプルな形の繰り返しを表現の土台とし、一度見出した表現様式は、数年にわたって反復される。その造形には、いずれも彼女の揺るぎない愛着、あるいは確信や信念のようなものが浮かび上がる。彼女の毎日もまた、確立されたリズムの中で進んでいく。その流れを乱されることを嫌い、誰が相手であっても遠慮することなく自分のスタイルを貫く。
  • Rikuto Yoshida
    Rikuto Yoshida
    自由な発想で描かれる彼にルールはなく、唯一は自分が楽しいかどうか、シンプルに純粋に創作へ向かう。ある日たまたま目に入ったファッション誌を手に取り、思うままにペンを走らせたところ、彼独自の感性と色使いで描かれ、とても不思議な作品に仕上がった。ペンのキャップをプラスチックのお椀に落とし、カラカラと音を鳴らすのがお決まり。
  • Masahiro Fukui
    Masahiro Fukui
    モチーフを見ながらアクリル絵具で描くというのが彼の制作スタイル。長年花をモチーフに描いており、近年はひとつの花にこだわり何ヶ月も同じ花を描き続けることがある。色や形を単純化して配置する画面の構成力も魅力のひとつ。太筆で描き進める作品は、愛らしく、見る人を優しい世界へ連れていく。
  • Takuma Hayakawa
    Takuma Hayakawa
    電車とアイドルを愛する。キャンバスという大地を、狂気的と言っていいほどの密度で縦横無尽に繋ぐ電車。それらは直線的で、豊かな色彩を作品にもたらす。時に乗客として、時には無数の車体をも呑みこむ大きな存在として、彼の‟推し“のアイドルをはじめとする人間達の姿が描かれる。カラフルなサイリウム煌めく夢のようなライブステージと、孤独な人々が連なり、機械的に通勤先へと向かう灰色のホーム、すべてを包み込んだ世界で、私たちを乗せた電車は一体何処に向かうのであろうか、そこはきっと“希望”ある場所に違いない。
  • Naoto Iguchi
    Naoto Iguchi
    街のコンビニと施設のコピー機を使って、自分の顔とその時々の気に入ったものを写し取る。施設にコピー機が導入されたことからはじまったそのルーティンは、20年以上経った今も1日3回欠かさず繰り返されており、毎日通うコンビニではプリントが終わると店員が手際よくガラス面についた顔の痕跡を拭いてくれる。
小山田圭吾

CORNELIUS

1969年東京生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。
現在まで7枚のオリジナルアルバムをリリース。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやREMIX、インスタレーションやプロデュースなど幅広く活動中。
https://www.cornelius-sound.com/

MUSIC

GLOW WITHIN

Songs:
Cornelius
Lyrics:
HERALBONY
Artists:
Hiroyuki Ukai, Naoto Iguchi, Misaki Oya, Masahiko Kimura, Midori Kudo, Sanae Sasaki, Takuma Hayakawa, Nozomi Fujita, fuco:, Masahiro Fukui, Rikuto Yoshida, Kaede Wajima and Kanta Wajima
GLOW WITHIN
ABOUT ROUTINE RECORDS

ABOUT ROUTINE RECORDS

日々のリズムで編み出した
音楽を通して繋がる日常

知的障害のある人には、日々繰り返される行動習慣がある場合があります。特定の商品のパッケージを毎日触る習慣があったり、ゴミを捨てる際、バケツを必ず「ポンっ」と叩くことがお決まりだったり。一見すると理解はできないかもしれないその行動も、彼らにとってはひとつひとつ意味のある欠かせないリズムとなっています。
「ROUTINE RECORDS」では、そんな行動習慣にまつわるさまざまな音を聴取/音源化。それらを用いて音楽を生み出す体験や、プロの音楽家による楽曲を通して普段触れることの少ない知的障害のある人とわたしたちの垣根なき日常を繋ぎます。

EXHIBITION

GLOW WITHIN

Corneliusと13人の作家の声

EXHIBITION

HERALBONY LABORATORY GINZA (東京)

会期:
2025年7月24日(木)〜8月11日(月)
時間:
11:00~19:00
場所:
HERALBONY LABORATORY GINZA GALLERY
東京都中央区銀座2丁目5-16 銀富ビル1F
> Google Map
定休日:
火曜(祝日の場合は水曜)

HERALBONY ISAI PARK(岩手)

会期:
2025年8月30日(土)〜9月30日(火)
時間:
11:00~19:00
場所:
HERALBONY ISAI PARK
岩手県盛岡市菜園1丁目10-1 パルクアベニュー川徳 1階
> Google Map
定休日:
カワトク休館日に準ずる
※会期中、作品の入替えあり
EXHIBITION